【シノプシス】ヨン・サンホ著 / グラフィックノベル『顔』

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ヨン・サンホ監督の著作『顔』を読みました!
シノプシスとしてまとめたのは今回が初めてなので、まだ至らぬ部分しかないと思いますが記録としてアップします。

とにかく、正確さよりも読み切り内容を把握することを目的に、所々Papago写真翻訳も使用しながら5時間程でまとめたものです。
誤訳があったら申し訳ございません(そこは原書をご確認ください💦)

シノプシス
1冊の原書のあらすじと解説を、A4用紙数枚にまとめた資料のこと。
レジュメ、リーディング・レポートとも呼ばれます。
(『出版&映像翻訳完全ガイドブック』P.92 出版翻訳講座より)

基本情報

【タイトル】얼굴(顔)
【著者名】연상호(ヨン・サンホ)
【ページ数】286ページ
【出版年】2018年
【出版社】세미콜론

【主な登場人物】

●イム・ドンファン
主人公。イム・ヨンギュの息子。「篆刻名人イム・ヨンギュ カリグラフィー研究所」の所長をしている。30年前にいなくなった母が死体で発見されたことをきっかけに、母の生涯を尋ね歩くことになる。

●イム・ヨンギュ
ドンファンの父親で視覚障がい者。篆刻名人として「生きている奇跡」と謳われている。

●チョン・ヨンヒ
ドンファンの母親。「醜い容貌をしていた」故に周囲からひどい扱いを受けて生きていたと言われる。

●キム・スジン
ヨンギュの密着ドキュメンタリー番組のプロデューサー。

●イ・ジンスク
ヨンヒの元・同僚。彼女に助けられた恩を仇で返してしまったことを悔やんでいる。

●ペク・ジュサン
ヨンヒが勤めていた被服会社の社長。ヨンギュとも交流のある仲であった。



本書について

盲人の篆刻名人イム・ヨンギュの成功ストーリーの密着取材中。
ある女性の死体が発見されたことを発端に、30年間隠されてきた事実が明らかにされた。
「顔」が消えたまま、あらゆる人にその醜さだけを記憶されてきた女性。
はたして、彼女の正体は?
ドキュメンタリータッチ、かつ、スリラー要素もふんだんで、読者は主人公と共に彼女の「顔」を追うこととなる。


社会派アニメーション監督として活躍してきたヨン・サンホ氏がグラフィック・ノベルという手法を取り完成させた本書。
ストーリーとしては【あらすじ】の通り、隠されていた人間の仄暗い部分が完膚なきまでに露わにされてしまう、ヨン・サンホ節が健在である。
韓国の生きた奇跡と持てはやされ実力もある父イム・ヨンギュが最後に顕す「顔」
そのヨンギュが“見えない目”で見た妻・ヨンヒの「顔」
幼少期から周囲の人間に醜いと蔑視されてきた母・ヨンヒの本当の「顔」
どちらも終盤になって私たちの眼前に提示される。
この対比も面白い。

さて、「グラフィックノベル (Graphic novel) 」とはどういったものか。
海外のグラフィックノベルを数多く日本へ紹介している翻訳家の原正人氏によると「(グラフィックノベルは)2000年代以降、北米やフランス語圏を中心に世界のさまざまな国で多く出版されている。基本的にはマンガと同義だが、しばしば社会問題を扱い、個人の体験を社会に還元する伝記や自伝の形式を取る」と定義されるという。

インターネットラジオのインタビュー内で、作家ヨン・サンホ氏は、単に「(この作品は)漫画ですよ」と答えていたが、グラフィックノベルの定義にしっかり当てはまる作品だ。
巻末の作家の言葉を読むと、長編アニメーション『豚の王』が受賞し、世間の注目を浴びれば浴びる程、また、次の作品である『フェイク』の作業が進んでいく程、これ以上どんな話も作り出せないのでは、という不安が絶えず頭の中を巡るようになったという。
『フェイク』後、次のアニメーション作品はこの『顔』になるだろうと予想されていたが、図らずも『ソウル・ステーション パンデミック』となり、さらに『新 感染』の制作へと進んでいった。
すると、2011年頃に生まれた不安が再びぶり返すようになった。
繰り返される不安。
この不安は、作中のイム・ヨンギュが苛まれていた蔑視感と同じような“妄想”の類だろう。
(もちろん、ヨン・サンホ氏が蔑視を受けていたというわけではない)

妄想を断ち切るも飲み込まれるも、その個人次第である、ということである。
本書で語られる美醜や善悪の受け取り方も個人次第のものだ。
周囲の人が醜いと言い続けていたヨンヒに対して、かつて彼女に救われたイ・ジンスクはひと言も「怪物みたいな顔だった」と言っていない。

この部分に思い至ったことにより、ヨン・サンホ氏の経験に基づいて創作されたであろう本作はやはり、社会の中で生きていく私たちが共感できる題材を描いている「グラフィックノベル」であると感じた。

読後には、帯にある漫画家チェ・ギュソク氏の言葉にあるように「エンディングを見てから数日はつきまとうヨン・サンホ特有の後味」が残るので、こころに余裕のあるタイミングで読むのをおすすめする。
(「暗い」か「明るい」かで言えば暗く、絵柄から伝わってくる雰囲気も湿度がある)


オール韓国語ではあるが、「グラフィック」ノベルなので、絵を追うだけでも内容は掴める。
内容と共に、A4判・ハードカバーでずっしりとくる本書の重みも感じてみて欲しい。



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あらすじ

《一場 その子の顔が怪物みたいだったんだ》

全盲の篆刻職人イム・ヨンギュへの密着ドキュメンタリー番組撮影中。
キム・スジンプロデューサーは職人としてのイム・ヨンギュよりも人間としての生き方を掘り下げたいとヨンギュに意見を出すが、ヨンギュ自身は乗り気ではない様子である。
翌日の撮影中に警察署からドンファンの携帯電話に「母・ヨンヒの白骨死体が発見されたので確認に来るように」と連絡が入る。
駆けつけたドンファンには母の身分証が手渡される。証明写真の部分は汚れていて顔をみることはできなかった。
葬式の場でドンファンはヨンギュに「母さんは僕を捨てて出て行ったのではなく、殺されたのか?」と問う。父親であるにも関わらず、記憶に残ることはないと曖昧な返答ばかりのヨンギュ。
そこに警察から連絡を受けたと言う親戚がやって来るが「遺産があればはっきりさせたい」と切り出す。
一方、ドンファンは遺影に使いたいから母の写真があれば欲しいと返す。
しかし、ヨンヒはひどく醜く写真に撮られることを嫌がっていたため写真は無いと断言されてしまう。

(過去 1957年の出来事)
幼い頃から友人、家族から容貌が醜いと見下された対応をとられていたヨンヒ。
ある日、学校の帰り道に姉から「お父さんがプレゼントを用意しているって言うから早く帰りな」と言われ帰宅すると、叔母と父が関係を持っている場面を目撃してしまう。
激高した父にひどく殴られたヨンヒは数日後、家の財産を持ち出し家を出て行ってしまったという。


《二場 俺たちはクソ雑巾って呼んだ》

家を出たヨンヒの話を葬式の場で耳にしたプロデューサーはテレビ局に「イム・ヨンギュ先生自身の話よりも妻ヨンヒの事件の方が面白くなるから取材の方向を変更したい」と連絡を入れ、ドンファンには「所長が望むならば力になる」と申し出た。
式場に届けられた花輪と一緒に「青風被服組合」の組合長の名刺も入っていたので、二人はその人物を尋ねることにしたが、ドンファンはプロデューサーのカバンから隠しカメラのレンズが覗いていることに気づく。
組合長ほか二名の元・社員に当時のヨンヒについて話を聞くことができた。

(過去 1974年)
ヨンヒは会社でクソ雑巾というあだ名で呼ばれていたという。休み時間もろくに取れない環境で、やっとのことで休憩をもらいトイレに行ったが行列のため入ることができず、席に戻った後に我慢の限界がきて漏らしてしまったのがきっかけだったと言う。
同僚たちは、ヨンヒの顔については記憶が曖昧で、とにかく醜かったという。

写真は残っていないのかと尋ねるドンファンに「入社するために写真は必要だったからそこに行けばあるだろう」と答えてくれた。
その他にも「容貌はよくなかったが性格は良かったんじゃないか」「全盲の人と結婚して幸せになっただろう」という言葉が出て来るも、ひとりが発した「社長と何かあったと思うが……」という言葉に場が淀んだ。
急に雰囲気が悪くなる三人。
渋々「それなら、この人に会ってみたらいい」と別の社員を紹介してくれた。
後日、そのイ・ジンスクという女性を尋ねると、涙ながらに昔の出来事を語ってくれたのであった。



《三場 やめろ、このアマ》

被服会社の社長は、当時としては社員の面倒をきちんと見てくれて小遣いなんかもくれて、従業員の間では天使と呼ばれていたが、イ・ジンスクはその社長に強姦され、その事実を誰にも打ち明けられずに泣いていた。
たまたまそこに通りかかったヨンヒを見て気持ちを堪えきれなくなったジンソクはヨンヒに抱きつき正直に話すと、その後は会社を休むようになった。
社長がジンスクに対して会社を辞めるように言い渡したことを知ったヨンヒは怒りのあまり、社長の悪評を書いたビラを街中で配る。
だが、必死に訴えてくれたヨンヒに対して、事態を表沙汰にされるのが恥ずかしいと思ったジンスクは会社に出てきてヨンヒの頬を強く打ってしまったのであった。
もし、ヨンヒが社長に殺されたなんてことがあったら私にも責任がある、と再び涙を流す。

後日、またもプロデューサーの取材網のおかげで、当時の社長ペク・ジュサンの居場所を突き止め会いに行くも、ジュサンはひどく落ちぶれ食事にも困っている様子だった。
インスタントのユッケジャンの差し入れると笑いながら過去を話し始める。
最後に発せられた言葉にドンファンとプロデューサーは言葉を失う。

「盲人が、自分の女房を殺したじゃないか」



《四場 嘘だ……》

実は、社長とイム・ヨンギュは知り合いだった。
社長はヨンギュを呼び出しては印鑑を掘らせ、いいように使っていた。
ある夜、ヨンギュとヨンヒが夜道を歩いていると暴漢に襲われた。
これが社長の差し金だと知ったヨンヒは、社長室に怒鳴り込む。
手下がヘマをしたと気づいた社長は、次はしっかりやれと命令を下す。
そこで、手下がヨンギュの家に行くと、中から出てきたのはヨンヒを担ぎ上げたヨンギュだった。
目の見えないヨンギュはそのまま山奥まで歩いて行き、ヨンヒを捨て去ったのであった。
ひどくショックを受けたドンファンは、プロデューサーのカバンを奪い、カメラのメモリを抜き、雨の中を走り去っていった。



《五場 私が醜いからですか?》

家に戻ったドンファンはヨンギュに単刀直入に問う。
「ペク・ジュサンという人に会って来ました。お父さんがお母さんを殺したと言うのですが本当ですか?」
ヨンギュも「その時は私たちにとってどれだけ苦しい時代だったか。お前には想像もできないだろう?」と過去を語り始める。

自分なりに工面した金で開業したヨンギュであったが、店はなかなか軌道に乗らなかった、
店番をするヨンギュの前に、ヨンヒがひとり、足を止めた。
「彫ってある文字が本当にきれいだ。しかし、買いたいが自分には使い道が無い」というヨンヒ。
「初めて来てくれたのだから今回はタダで彫ってあげます」と言うヨンギュ。
二人の縁はそこから始まり、後日、たい焼きや食事を差し入れてくれたり、店のビラを作って撒いてくれるようになった。
周囲に人もそのようすを見て、二人でいっしょに住めばいいと勧める。
ヨンギュは「自分の人生の中でこんなに良い拾い物は無い」と考え結婚したが、子が生まれても生活は苦しいままだった。

ある日、家を訪ねてきた友人と話をしていると、彼は急に「女房は性格はいいのか?」と尋ねる。
「もちろん、自分は彼女の顔を拝むのが夢だ」と答えるヨンギュ。
しかし、友人は「見えない方がいい。周りの人たちは教えてくれなかったのか?怪物みたいな顔だ」と言い放ったのであった。
その瞬間、ヨンギュは自分の目が見えないばかりに周囲の人間たちに弄ばれていたのだと悟った。
「きれいなこと、醜いことがどういうことが盲人の私にはわからないとでも?」
「私にもわかっている!美しいものは尊敬され、醜いものは蔑まれるということを!」

ペク社長とヨンヒの間で揉め事が起こったからってどうしてあの女は自分を困らせるんだ。
その蔑視から抜け出すために今までどうやって生きてきたかわかるか?
周囲の蔑視に気づいた瞬間から、その視線を感じ苛まれてきたというヨンギュ。

「妻と一緒にいる限り、この蔑視は続く」
殺すしかないと追いつめられるようになった。

ある夜―社長の手下たちが家を訪れてきた夜―、どうしてまだ社長の所に行ったのかということで口論になった。
言い争っているうちに、妻が漏らした「私の行動が誤っていると思うのは、私が醜いからですか?」という言葉に箍(たが)が外れた。
妻の首を絞め、気がつくと息がなくなっていた。


「私の運命からその侮蔑感を取り除いたのだ」と告白する父親に対してドンファンは「そんな考えはまったく理解できません」と言い放つ。

ヨンギュは息子を「この寄生虫みたいな奴め!」と罵る。

「僕は寄生虫だろうけれど、あなたは殺人者だ」

そう言い残し部屋を出て行くドンファン。


後日、やつれた表情のドンファンは喫茶店にプロデューサーを呼び出し、カメラのメモリを返す。
「不必要な部分は削除しました。うまいことまとめてください。父は、生きている韓国の奇跡ですから」


プロデューサーから、組合員の写真を撮っていた写真館の住所メモを渡されたドンファンは、そこを訪ねてみることにした。
ドンファンを快く迎え入れてくれた主人から「息子さんですか?」と聞かれる。
どうしてわかったのかと尋ねると「似ているからです。この方は覚えていますから」と言われ、写真を1枚手渡される。
ひと目見るなり嗚咽が漏れるドンファン。
写っていたのは、醜さなどかけらもない優しくあたたかな表情の女性だった。





書籍 帯のことば

シム・ウンギョン

ヨン・サンホ監督の独特なタッチ、切れ味のよい話に最初から最後まで気を抜けない。
Welcome to ヨン・サンホワールド!
あなたが直接その“顔”を目撃しろ!

チェ・ギュソク

余韻と呼ぶには毒であり、奇怪感、エンディングを見てから数日はつきまとうヨン・サンホ特有の後味を久しぶりに吟味した。
アニメーターヨン・サンホのファンとして彼の超人的なまじめさと創作熱がありがたい。






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